ファミリー・フレンド・ファン|私たちが大切にする3つのF
こんにちは。院長の半田和義です。
クリニックを開いてから、ずっと自分に問いかけてきたことがあります。
「どんな組織をつくりたいのか」
医療の質を高めたい。地域に必要とされたい。もちろん、どれも本音です。ただ、それらを支えるいちばん土台の部分で、私が何より大事にしていることがあります。今日はその話をさせてください。
私たちが大切にしている「3つのF」
私が大切にしているのは、3つのFです。
1つ目のF ── Family(ファミリー/家族)
2つ目のF ── Friend(フレンド/友人)
3つ目のF ── Fan(ファン)
大事なのは、この3つが並列ではなく、順番になっているということです。
いちばん内側にファミリーがあり、その外側にフレンドがあり、さらにその外側にファンがいる。内側の温かさが、同心円状にじわじわと外へ広がっていく。私が思い描いている組織は、そういうかたちをしています。
だから私は、外側から手をつけません。いちばん内側から、順番に温めていきます。
1つ目のF ── まずは「ファミリー」から
ここで言うファミリーには、二つの意味があります。
ひとつは、私やスタッフ一人ひとりの実際のご家族。もうひとつは、クリニックで一緒に働く仲間そのものです。
働くことは、人生の目的ではありません
仕事は、人生を豊かにするための手段です。目的ではありません。
それなのに、仕事のせいで家族と過ごす時間が削られ、心の余裕がなくなっていく。医療の現場では、残念ながらそれが長いあいだ当たり前のこととして扱われてきました。「患者さんのためだから」という言葉は、時にとても便利に使われてしまいます。
私は、そこを変えたいと思っています。
お子さんの発表会に行けること。ご家族の具合が悪いときに、肩身の狭い思いをせずに休めること。「今日は家庭の事情で」と、普通に言える職場であること。
特別なことではありません。当たり前のことが、当たり前である場所にしたい。ただそれだけです。
スタッフもまた、ひとつの家族です
そしてもうひとつのファミリーが、ここで一緒に働く仲間たちです。
私は、スタッフに我慢を強いることで成り立つ医療を、良い医療だとは思っていません。
受付で自然に笑顔になれるのは、その人の心に余裕があるからです。看護師が患者さんの小さな不安に気づけるのは、自分自身が大切にされている実感があるからです。困っている同僚に「代わろうか」と声をかけられるのは、その人自身に余力が残っているからです。
スタッフが満たされていない組織で、患者さんだけが満たされるということは起こりません。
この順番は、どうやっても逆にはならないのだと思います。
2つ目のF ── その外側にいる「フレンド」
いちばん内側のファミリーが満たされてくると、その温かさは自然と外へにじみ出ていきます。最初にそれが届くのが、2つ目のF、フレンドです。
スタッフのご家族、友人、以前一緒に働いていた仲間。患者さんのご家族やお知り合い。私たちのまわりに、ゆるやかにつながってくださっている方々です。
私は、自分の組織を測るときに使っている物差しがひとつあります。
「ここで働いてみない?」と、スタッフが自分の友人を誘える職場かどうか。
本当に居心地のいい場所なら、人は放っておいても、自分の大切な人を連れてきます。反対に、どれだけ求人に力を入れても、今そこで働いている人が友人を誘いたいと思えないのなら、その組織はどこかが確実に歪んでいます。
スタッフが友人を誘いたくなるかどうかは、どんな満足度調査よりも正直です。
患者さんについても、まったく同じことが言えます。「あそこの先生に診てもらったらいいよ」。そう身近な誰かに伝えてくださる方がいる。これは、広告では決して買えないものです。
3つ目のF ── いちばん外側に広がる「ファン」
そして3つ目が、ファンです。
正直にお話しすると、ファンは、つくろうと思ってつくれるものではありません。
キャンペーンを打っても、うまい言葉を並べても、人の心はそう簡単には動きません。ファンというのは、内側にある温かさが外へにじみ出た結果として、あとから生まれてくるものです。
受付のスタッフが、名前を覚えていて自然に声をかけてくれた。看護師が、聞かれてもいないのに「寒くないですか」と膝掛けを持ってきてくれた。診察が終わったあと、少しだけ世間話につきあってくれた。
そういう小さな瞬間の積み重ねが、「またここに来よう」に変わっていきます。マニュアルには書けません。心に余裕のある人からしか、こぼれ落ちてこないものだからです。
だから私は、ファンを増やす方法を考える前に、いちばん内側のファミリーが健やかであるかどうかを見るようにしています。
順番を間違えると、すべてが崩れます
この3つのFは、順番を逆にした瞬間に機能しなくなります。
「まず患者満足度を上げよう」「まず選ばれるクリニックになろう」。いちばん外側から手をつけた組織は、たいてい内側から静かに壊れていきます。
スタッフに笑顔を指示する。接遇研修を増やす。数字の目標を掲げる。どれも間違ってはいないのですが、内側が疲れきったままそれをやると、現場に残るのは「やらされている感」だけです。そして、その空気は必ず患者さんに伝わります。人は、つくられた笑顔と、そうでない笑顔を驚くほど正確に見分けます。
遠回りに見えても、内側から順番に。私はそう決めています。
そのために、実際にやっていること
思いだけでは、組織は変わりません。当院で実際にやっていることを、いくつかご紹介します。
1. 仕事が終わっていれば、時間を待たずに帰っていい
当院では、予定していた勤務時間が残っていても、その日の業務が終わっていれば帰宅して構わないことにしています。もちろん、お給料は予定どおりの勤務時間ぶんをお支払いします。
時計の針が進むのを待つだけの30分に、価値はないと思っています。その30分は、ご家族との夕食や、自分のための時間に使ってほしい。
時間ではなく、仕事で区切る。ただそれだけの考え方です。早く終わらせた人が損をする仕組みでは、誰も本気で工夫しようとは思いません。
2. 家庭の予定を、我慢しなくていい働き方
「今日は家庭の事情で」と普通に言える職場にしたい。先ほどそう書きましたが、それを言葉だけで終わらせないために、いくつもの仕組みを用意しています。
・時短勤務
育児中のスタッフが、所定より短い時間で働いています。フルタイムに戻れるようになるまで、無理をする必要はありません。
・1時間単位、半日単位の有給
30分の用事のために1日休む、ということをしなくて済みます。必要なぶんだけ使ってください。
・希望休の事前申告制
休みたい日は、前もって出してもらいます。「言い出しにくい空気」をつくらないための、いちばん基本的な仕組みだと思っています。
・お子さんの急な発熱へのフォロー体制
子どもの体調は、こちらの都合を待ってくれません。急に抜けざるを得なくなったときに、まわりでカバーできる体制をとっています。
・学校行事や家庭の予定を優先できる
入学式も、運動会も、参観日も、一度きりです。動かすのは、仕事のほうでいいと考えています。
・固定シフトと変動シフトを選べる
生活のリズムは人それぞれです。決まった曜日・時間で働きたい方も、月ごとに調整したい方も、どちらも選べます。
並べてみると細かいものばかりです。でも、働きながら家庭を持つ人がつまずくのは、いつもこの「細かいところ」なのです。立派な制度をひとつ掲げるより、小さな逃げ道をたくさん用意しておくほうが、現場では確実に効くのだと思っています。
3. 決裁できる範囲を、できる限り本人に渡す
いちいち院長の許可を取らないと何ひとつ進まない組織には、したくないと思っています。ですから決裁権は、できる限りスタッフ本人に持ってもらうようにしています。
そのうえでお願いしているのが、「まずAIと壁打ちしてから持ってきてほしい」ということ。ClaudeやCodexといったAIを相手に、自分の案の穴や、思いつかなかった選択肢を一度洗い出してもらう。そのうえで「こう考えたので、この方向で進めます」と上申してもらうかたちにしています。
これは効率化のためだけではありません。人に相談する前に、自分の頭で一度考え抜く時間を持ってほしいからです。壁打ちを済ませてきた提案には、私が口を挟む余地がほとんどありません。それでいいのだと思っています。
4. 学ぶ時間を、勤務時間として扱う
研修や勉強会に参加するとき、費用を補助し、参加した時間は勤務として扱っています。
「自分の勉強なんだから、休みの日に、自腹で」。医療の世界では、長いあいだそれが当たり前とされてきました。けれど、学んだことが返っていく先は、目の前の患者さんです。それなら、費用も時間もクリニックが持つのが筋だと思っています。
それに、休日を削って学べる人だけが伸びていく職場は、結局のところ、家庭のある人を置き去りにします。学ぶために、家族との時間を差し出さなくていい。そうしておきたいのです。
5. 一対一で話す時間を、定期的にとる
院長やリーダーとの1on1面談を、定例で行っています。何か問題が起きたときに呼び出すのではなく、何もなくても、定期的に座って話す。この「何もなくても」が大事なのだと思っています。
体調のこと、家庭のこと、働き方の希望。言いにくいことを飲み込ませてしまう組織は、必ずどこかで無理が出ます。そしてその無理は、たいてい一番真面目な人のところに出ます。
話す場が決まっていると、「わざわざ言うほどでもないか」と思っていたことが、ぽろりと出てきます。その「ぽろり」を拾えるかどうかで、半年後の景色はずいぶん変わります。
そのためにも、まず私自身が、言いやすい相手でありたいと思っています。
6.ご家族の時間を支える
福利厚生としてリゾートワークスを導入しており、スタッフ本人だけでなく、2親等までのご家族の旅行にも補助が使えます。ここは、ぜひ使ってくださいと積極的にお伝えしています。
3つのFのいちばん内側にいるのは、スタッフ本人だけではありません。その方のご家族も含めて、内側なのです。
ご両親と、お子さんと、パートナーと。どこかへ出かけてきてほしい。そしてご家族が「あそこで働いていてよかったね」と言ってくださる職場でありたいと思っています。
おわりに
ファミリー、フレンド、ファン。
順番に並べてみると、ずいぶん遠回りに見えるかもしれません。でも私は、この順番でしか、本当に温かい組織はできないと思っています。
目の前のスタッフを大切にすること。そのご家族や友人まで含めて大切にすること。その温かさが、少しずつ波紋のように広がって、いつか地域の方々に届くこと。
私たちが目指しているのは、そういうクリニックです。
まだ道半ばで、できていないこともたくさんあります。それでも、この順番だけは間違えずにいたいと思っています。
あすと長町はんだクリニックでは、一緒に働く仲間を募集しています。
この「3つのF」に少しでも共感してくださった方と、お会いできたらうれしいです。詳しくは求人情報のページをご覧ください。