コレステロールと寿命|知っておきたい5つのこと
こんにちは。あすと長町はんだクリニックです。
健康診断の結果をお持ちになった方から、いちばんよく聞かれる質問のひとつがこれです。
「コレステロールって、結局どうなんですか?」
「高いと言われたけれど、体調はどこも悪くない」
「高いほうが長生きだ、という話を聞いたことがある」
「薬は一度飲み始めたら、やめられないんでしょう?」
いろいろな情報が飛び交っていて、何を信じればいいのか分からなくなってしまう。無理もないことだと思います。
今日は、コレステロールと寿命の関係について、私たちが診察室でお話ししている内容を5つに整理してみました。健診の結果と向き合うときの手がかりになれば幸いです。
🧬 1. コレステロールは「悪者」ではありません
まず、いちばん大切なことから。
コレステロールは、体の細胞をつくる材料(細胞膜)になり、ホルモンの材料になり、脂肪の消化を助ける胆汁の材料にもなります。なくては生きていけない、大切な物質です。
そしてもうひとつ、意外に知られていないことがあります。体の中にあるコレステロールのうち、7〜8割は体の中(主に肝臓)でつくられたもので、食事から入ってくる分はそれほど多くありません。
ですから、「卵を我慢すれば数値が下がる」とは限らないのです。食事の影響がまったくないわけではありませんが、その効き方には個人差が大きく、食べるものを減らすと体が不足分をつくって補おうとすることもあります。
「悪玉」という呼び名のせいで、コレステロールそのものが体の敵のように思われがちですが、そうではありません。問題なのは「あること」ではなく、「多すぎる状態が長く続くこと」です。
🩸 2. では、なぜ健診で測るのでしょうか
血液中のコレステロールが多い状態が続くと、それが血管の壁にたまっていきます。血管は少しずつ硬くなり、内側が狭くなっていきます。これが動脈硬化です。
そして動脈硬化が進んだ先にあるのが、心筋梗塞や脳卒中です。
つまりコレステロールの数値は、今日や明日の体調を表しているのではありません。10年後、20年後の血管がどうなっているかを予測するための手がかりとして測っています。
やっかいなのは、動脈硬化が進んでいる途中には、痛みも自覚症状もほとんどないということです。「元気だから大丈夫」が通用しないのが、この病気のこわいところです。健診で測る意味は、まさにそこにあります。
📊 3.「高い人のほうが長生き」というデータのからくり
「コレステロールが高い人のほうが長生きだった」という調査結果が、ときどき話題になります。
数字としては、本当です。ただ、その理由をきちんと見ておく必要があります。
コレステロールが「低い人」には、誰が含まれているか
コレステロールが低いグループの中には、次のような方が混ざっています。
- もともと体質的に低い方
- 栄養が足りていない方
- がんや肝臓の病気などで、体力が落ちている方
お気づきでしょうか。「コレステロールが低いから亡くなった」のではなく、「病気で弱っているから、コレステロールが低くなっていた」というケースが含まれているのです。
原因と結果が、逆に見えてしまっているわけです。そのため単純に比べると、「高いほうが長生き」という形になって現れます。
もうひとつ、時間のずれの問題
一方で、コレステロールが高い方は、血管の病気が実際に起こるまでは元気に見えます。そしてその病気が起こるのは、何年も、ときには何十年も先のことです。
数年で区切った調査では、その差はまだ現れません。観察している期間が短いほど、「高くても問題ない」ように見えてしまうのです。
ポイント:数値が極端に低い場合は、それ自体を喜ぶのではなく、裏に別の病気が隠れていないかを一度調べておくことをおすすめします。
⏳ 4.「寿命」と「健康寿命」は、別の話です
ここも、ぜひ知っておいていただきたいところです。
・寿命=何歳まで生きたか
・健康寿命=介護を必要とせず、自分の力で元気に過ごせた期間
心筋梗塞や脳卒中は、命が助かっても後遺症が残ることがあります。手足が思うように動かない。言葉が出にくい。介護が必要になる。そうなったとき、失われるのは寿命ではなく、健康寿命のほうです。
コレステロールを管理する目的は、単に長く生きることだけではありません。元気に、自分らしく過ごせる期間をできるだけ長くすること。私たちが本当に守りたいのは、そちらです。
💊 5. 数値だけで、薬を決めるわけではありません
LDLコレステロール(いわゆる悪玉)が高いというだけで、すぐに薬が必要になるわけではありません。
次のような要素を合わせて、その方ごとのリスクを見て判断します。
薬を使うかどうかは、これらを合わせて判断します
- 年齢、性別
- 血圧
- 喫煙しているか
- 糖尿病があるか
- ご家族に、若くして心臓の病気になった方がいるか
- すでに心筋梗塞や脳卒中を起こしたことがあるか
すでに血管の病気を起こしたことのある方は、しっかり下げたほうが再発を防げることが、はっきりと分かっています。この場合は、迷わずお薬をおすすめします。
反対に、ほかのリスクが低い方であれば、まずは食事や運動といった生活習慣の見直しから始めます。同じ数値でも、判断はまったく変わってくるのです。
「あなたの数値」ではなく「あなたという人」を見て決める。これが、私たちの基本的な考え方です。
❓ よくあるご質問
下げすぎると、体に悪いのではありませんか?
これまでに行われた臨床試験では、LDLをかなり低い水準まで下げても、害があるという結果は出ていません。ただし、お薬を使う以上、副作用が出ていないかは定期的に確認していきます。気になる症状があれば、遠慮なくお伝えください。
生活習慣を変えれば、薬はいらなくなりますか?
食事や運動でLDLが下がる幅は、だいたい1〜2割程度が上限と考えられています。効果は確かにありますし、取り組む価値も十分にあります。ただ、それだけでは目標に届かない方もいらっしゃいます。もともとの数値と、その方のリスクによって変わってきます。
LDLがとても高いと言われました
180 mg/dL以上の場合、体質として遺伝する「家族性高コレステロール血症」の可能性があります。決して珍しい病気ではなく、若いうちから動脈硬化が進みやすいという特徴があります。
ご家族にも関わることですので、一度きちんと調べておくことをおすすめします。
✅ まとめ
- 1. コレステロールは、体に必要な物質です。問題なのは「あること」ではなく「多すぎる状態が続くこと」です。
- 2. 健診で測るのは、将来の血管の病気を予測するためです。今の体調ではなく、10年後を見ています。
- 3.「高いほうが長生き」に見えるデータには、からくりがあります。低い人の中に、病気で弱っている方が混ざっているためです。
- 4. 目標は、長生きだけではありません。元気に過ごせる時間を延ばすことです。
- 5. 数値だけでなく、その方の状況全体を見て、一緒に方針を決めます。
健診の結果を見て不安になったり、逆に「まあ大丈夫だろう」と引き出しにしまい込んでしまったり。どちらもよくあることだと思います。
数字の意味が分かると、向き合い方が変わります。気になる点は、遠慮なく診察のときにお聞きください。結果票をお持ちいただければ、その場で一緒に見ていきます。