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息を吸うと肺が痛い|考えられる原因と受診すべきサイン

健康コラム

こんにちは。あすと長町はんだクリニック院長の半田です。

外来では、「息を深く吸うと肺のあたりがチクッと痛む」「咳をすると胸の奥が痛くて、肺の病気ではないかと心配です」というご相談をよくいただきます。息を吸ったときに「肺が痛い」と感じると、肺そのものに何か起きているのではと不安になりますよね。この記事では、「肺が痛い」と感じるとき、実際には体のどこが痛んでいるのかという仕組みから、急いで受診が必要な病気、胸の壁から来る痛み、受診の目安までをお話しします。逆流性食道炎やストレスによる痛みも含めた胸の痛みの全体像は、「息を吸うと胸が痛い」の記事でくわしく解説していますので、あわせてご覧いただければと思います。

🚑 1)まず確認:こんなときはすぐに119番を

最初に、特に大切なことをお伝えします。次のような症状がある場合は、様子を見ずにすぐに救急車を呼んでください。

すぐに救急要請が必要なサイン

  • 突然、胸が痛くなり、同時に強い息苦しさが出た
  • 息苦しさがどんどん強くなる、横になれないほど苦しい
  • 唇や顔色が紫っぽい、冷や汗が出ている
  • 気が遠くなった、意識がぼんやりする、倒れた
  • 片方の脚が急に腫れて痛んだあとに、胸の痛みや息切れが出た
  • 胸が締めつけられる、押さえつけられるような痛みが数分以上続く
  • 血を吐いた、血の混じった痰がたくさん出る

🔍 2)「肺が痛い」の正体:肺そのものは痛みを感じにくい

意外に思われるかもしれませんが、肺の中には痛みを感じる神経がほとんどありません。そのため、病気が肺の中だけにとどまっている間は、痛みが出にくいとされています。では、「肺が痛い」と感じるとき、どこが痛んでいるのでしょうか。主に考えられるのは、次の2つの場所です。

ひとつめは胸膜(きょうまく)です。胸膜は肺を包んでいる薄い膜で、肺の表面をおおう膜と、胸の壁の内側をおおう膜の2枚があります。このうち胸の壁側の膜には、痛みを感じる神経がたくさんあります。ここに炎症が起きたり、空気がもれたりすると、息を吸って膜が動くたびに痛みが出ます。

ふたつめは胸の壁です。肋骨(あばら骨)、軟骨、筋肉、神経など、肺の外側にある部分のことです。ここが痛んでも、場所が近いため「肺が痛い」と感じることがあります。

つまり、「息を吸うと痛い」のは、膨らんだ肺が胸膜や胸の壁を動かしたり引っぱったりするためです。もうひとつ大切なのは、その裏返しで「痛くないから肺は大丈夫」とは言えないことです。長引く咳や痰、血の混じった痰、体重が減るなどの症状がある場合は、痛みがなくても受診してください。

⚠️ 3)急いで受診が必要な病気

気胸(ききょう)

肺に穴があいて空気がもれ、肺がしぼんでしまう病気です。肺の表面にできた小さな袋(ブラ)が破れて起こることが多く、日本呼吸器学会によると10〜30代のやせ形の男性に多いとされています。COPD(慢性閉塞性肺疾患)など、肺の病気がある方に起こることもあります。

典型的なのは突然の胸の痛みと息苦しさです。もれた空気がどんどん増えると心臓や肺を強く圧迫し、命に関わる状態(緊張性気胸)になることがあります。また、一度なった方は再発することがあるため、以前に気胸を経験された方は、似た痛みに気づいたら早めに受診していただければと思います。

肺塞栓症(はいそくせんしょう)

脚などの静脈にできた血のかたまり(血栓)が血液の流れに乗って肺の血管に詰まる病気で、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれます。長時間同じ姿勢で座っていたあと、手術後や病気で寝ている時間が長かったあとなどに起こりやすくなります。

突然はじまる息切れ、胸の痛み、咳が主な症状で、その前に片方の脚の腫れや痛みが出ることがあります。大きな血栓が詰まると突然死の原因にもなるため、疑わしいときはすぐに救急を受診してください。私も病院の外科で長く診療してきましたが、この病気は「早く気づくこと」が何より大切だと感じています。

肺炎・胸膜炎

肺炎では、咳、痰、息切れ、熱に加えて、炎症が胸膜まで広がると、息を吸ったときの痛みが出ることがあります。胸膜炎は胸膜そのものの炎症で、細菌などの感染症のほか、がんや結核などが原因になることもあります。熱を伴う胸の痛みは、早めに受診してください。

なお、高齢の方の肺炎では、熱や咳がはっきりせず「いつもと様子が違う」「ボーっとしている」「食欲がない」といった形で見つかることもあります。ご家族の様子がいつもと違うと感じたときも、遠慮なくご相談ください。

🦴 4)胸の壁から来る痛み

「肺が痛い」と感じる痛みの中には、実際には胸の壁が原因のものも多くあります。代表的なのは肋間神経痛で、肋骨にそって走る神経の痛みです。ピリッと電気が走るような痛みが、片側に出やすいのが特徴です。

また、肋骨と胸の真ん中の骨をつなぐ軟骨に炎症が起きる肋軟骨炎では、その部分を押すと痛みます。激しい咳が続いたあとや、体を強くひねったあとには、筋肉の痛みや肋骨のひびが起こることもあります。さらに、帯状疱疹の初期には、発疹が出る前に片側の肌のピリピリした痛みが先に出ることがあり、外来でも見落とさないように気をつけている病気のひとつです。

見分ける手がかりを表にまとめました。あくまで目安で、これだけで原因を決めることはできません。

手がかり胸膜・肺が関係していそうなとき胸の壁が関係していそうなとき
押したとき押しても痛みはあまり変わらない1か所を押すとはっきり痛む
体を動かしたとき姿勢よりも呼吸や咳で強くなる体をひねる、腕を上げると痛む
ほかの症状熱、咳、痰、息苦しさを伴うことが多い熱や息苦しさはないことが多い
始まり方突然、または熱や咳とともに咳や運動など、きっかけがあることが多い

🏥 5)受診の目安

目安症状の例
すぐに救急突然の胸の痛みと強い息苦しさ/唇が紫っぽい・冷や汗/意識が遠のく・倒れた/脚の腫れのあとに胸の痛みや息切れ/締めつけられる痛みが数分以上続く/血を吐いた
今日中に受診息苦しさがある/熱があり、息を吸うと痛む/痛みがだんだん強くなる/以前に気胸になったことがあり、似た痛みが出た
早めに受診(数日以内)痛みが1週間以上続く/咳や痰が長引いている/何度も同じ痛みを繰り返す/片側の肌のピリピリした痛みが続く
様子を見てよい咳や運動などのきっかけがはっきりしていて、軽い痛みが日ごとにやわらいでいる/熱や息苦しさがない

「様子を見てよい」場合でも、痛みが強くなる、息苦しさや熱が出てきたときは、ためらわずに受診してください。迷ったときは、受診してから「大丈夫でした」となるほうがよいと私は考えています。

🩺 6)当院での診察

当院では、問診と聴診で痛みの場所や性質、呼吸の音を確かめ、必要に応じて胸部レントゲン検査や心電図・心エコー検査を行い、原因を考えます。受診の際は、いつから痛むか、きっかけ(咳・運動・長時間の移動など)、熱や息苦しさの有無を教えていただけると、診察がスムーズに進みます。

気胸や肺塞栓症など、専門的な検査や治療が必要と考えられる場合は、専門の医療機関をご紹介します。

✅ まとめ

肺の中には痛みを感じる神経がほとんどなく、「肺が痛い」と感じるとき、痛んでいるのは主に胸膜や胸の壁です。突然の痛みと息苦しさは気胸や肺塞栓症のことがあるため、すぐに救急を受診してください。熱や咳を伴う痛みは肺炎や胸膜炎も考えて早めに受診し、押すと痛む・体をひねると痛む場合は胸の壁の痛みのことが多いと考えられます。そして、痛みがなくても、長引く咳や血の混じった痰は受診のサインです。

胸の痛みは、ご本人にとってとても気がかりな症状だと思います。ひとりで悩まず、気になるときはいつでも声をかけてください。

胸の痛み全体については息を吸うと胸が痛いときの記事、咳が長引いている方は咳が1か月続くときの記事、痰の色が気になる方は痰の色でわかることの記事もご覧ください。

あすと長町はんだクリニックでは胸の痛みや長引く咳・痰の診療で、息を吸ったときの胸や肺の痛みのご相談を承っています。発熱を伴う場合は発熱外来をご利用ください。日曜日も診療しております。

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